病院を受診するとき、マイナンバーカードを顔認証付きカードリーダーに置くと「電子処方箋を希望する」という選択肢が表示されることがあります。
「電子処方箋って何だろう?」
「紙の処方箋と何が違うの?」
よく分からず、いつもの紙の処方箋を選んでいる方もいるのではないでしょうか。
電子処方箋という名前から「今まで紙でもらっていた処方箋がスマートフォンに届くのかな?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、電子処方箋は単純に紙の処方箋をスマートフォンやPDFに置き換えたものではありません。
電子処方箋を選ぶと、処方箋そのものは電子処方箋管理サービスに登録されます。
この記事では、医療事務として働く私が、電子処方箋とはどのような仕組みなのか、紙の処方箋と何が違うのか、実際に利用するときはどうすればよいのかをできるだけ分かりやすく紹介します。
🩺 この記事で分かること
※私が勤務する医療機関では、現在電子処方箋を導入していません。そのため、この記事では厚生労働省などの公的な情報をもとに、患者さんが利用するときに知っておきたい内容を中心にまとめています。
厚生労働省:電子処方せん(国民向け)
※この記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。
電子処方箋とは?
電子処方箋とは、これまで紙で発行していた処方箋を電子化し、「電子処方箋管理サービス」を通して医療機関と薬局が処方箋の情報をやり取りする仕組みです。
「電子処方箋」という名前から、紙の処方箋がPDFになったり、スマートフォンに送られてきたりするイメージを持つかもしれません。
しかし、患者さんのスマートフォンに処方箋そのものが届く仕組みではありません。
電子処方箋では、医師・歯科医師が処方した情報が電子処方箋管理サービスに登録され、薬局ではそこから処方箋を確認して調剤します。
電子処方箋の役割は、単に「紙をなくすこと」だけではありません。
患者さんが過去のお薬情報の提供に同意することで、対応する医療機関や薬局では、医師・歯科医師・薬剤師が過去の処方・調剤情報を確認できます。
それによって、今回処方される薬について、ほかの医療機関や薬局で処方・調剤された薬との重複や併用禁忌を確認することができます。
つまり電子処方箋は、
「紙の処方箋をデジタルに置き換えるだけではなく、お薬の情報を医療機関と薬局で確認しやすくする仕組み」
と考えると分かりやすいと思います。
紙の処方箋と電子処方箋は何が違う?
患者さんにとって一番分かりやすい違いは、処方箋そのものを持って薬局へ行く必要があるかどうかです。
紙の処方箋の場合
医療機関で紙の処方箋を受け取る
↓
患者さん自身で処方箋を薬局へ持っていく
↓
薬局で受付し、処方箋を渡す
↓
薬を受け取る
電子処方箋の場合
医療機関で電子処方箋を選択
↓
電子処方箋に対応した薬局で受付
↓
薬を受け取る

細かな仕組みまで覚えなくても、まずは
「電子処方箋なら、紙の処方箋そのものを薬局まで持っていかなくてよい」
と考えると分かりやすいと思います。
電子処方箋なのに紙を渡されることもある
少し分かりにくいのが、電子処方箋を選んでも医療機関から紙を渡される場合があることです。
この紙は「処方内容(控え)」と呼ばれます。
名前のとおり、処方された内容を患者さん自身が確認するためのもので、紙の処方箋そのものではありません。
マイナポータルから処方内容を確認できるため、医療機関によっては処方内容(控え)を渡さない場合もあります。
「電子処方箋にしたのに紙をもらったから、この紙が処方箋なのかな?」
と迷ってしまいそうですが、
「処方内容(控え)」と書かれている紙は、処方箋ではない
と覚えておくと分かりやすいです。
電子処方箋を利用するメリット
過去のお薬情報を共有できる
マイナ保険証を利用し、患者さんがお薬情報の提供に同意すると、電子処方箋に対応した医療機関や薬局で過去のお薬情報を確認してもらうことができます。
いつもとは違う医療機関や薬局を利用するときにも、お薬の情報を確認してもらいやすくなります。
薬の重複や飲み合わせを確認しやすくなる
複数の医療機関を受診していると、それぞれから薬が処方されることがあります。
電子処方箋では、処方・調剤情報を活用し、今回処方される薬とほかの薬との重複や併用禁忌などを確認する仕組みがあります。
複数の医療機関に通院している方にとっても、薬を安全に使用するための一つの仕組みになっています。
紙の処方箋を持ち歩かなくてよい
電子処方箋では処方箋そのものが電子処方箋管理サービス上にあるため、紙の処方箋を薬局まで持っていく必要がありません。
「処方箋を家に忘れてしまった」
「どこにしまったか分からなくなった」
といった、紙の処方箋ならではの心配を減らせるのもメリットです。
まだすべての医療機関で使えるわけではない
電子処方箋は全国で導入が進められていますが、すべての医療機関で利用できるわけではありません。
デジタル庁が公表している2026年6月時点のデータでは、電子処方箋の導入率は、
- 病院:約20%
- 診療所:29.5%
となっています。
実際、私が勤務している医療機関でも、現在は電子処方箋を導入していません。
電子処方箋を利用したい場合は、受診する医療機関と薬を受け取る薬局の両方が対応しているか、事前に確認しておくと安心です。
厚生労働省では、電子処方箋に対応している医療機関・薬局を確認できるリストやマップも公開されています。
電子処方箋を使う前に知っておきたいこと
マイナ保険証のカードリーダーで電子処方箋を選択する
マイナ保険証を利用する場合、医療機関に設置されている顔認証付きカードリーダーで受付をします。
電子処方箋に対応している医療機関では、カードリーダーの画面に処方箋の種類を選ぶ項目が表示されるため、患者さん自身で電子処方箋を選択します。
対応施設でも選択画面が表示されない場合などは、診察時に医師・歯科医師へ電子処方箋を希望することを伝える場合もあります。
マイナ保険証がなくても利用できる
「電子処方箋=マイナンバーカードが必須」と思う方もいるかもしれません。
しかし、資格確認書でも電子処方箋を利用できます。
ただし、資格確認書を利用する場合、薬局で電子処方箋を確認してもらうために、処方内容(控え)などに記載された6桁の引換番号が必要です。
また、資格確認書では、過去のお薬情報をマイナ保険証と同じようにデータで共有することはできません。
処方内容(控え)は薬を受け取るまで捨てない
マイナ保険証を使って薬局で受付する場合、基本的に処方内容(控え)を提出する必要はありません。
一方で、資格確認書を利用する場合には、処方内容(控え)に記載された6桁の引換番号が必要です。
「電子処方箋だから、この紙はいらないんだ」
とすぐに捨てず、薬を受け取るまでは手元に置いておくと安心です。
電子処方箋で薬を受け取るまでの流れ
ここまでの内容を踏まえて、実際に電子処方箋を利用するときの流れをまとめます。
① 電子処方箋に対応した医療機関を受診する
↓
② 電子処方箋を選択する
↓
③ 診察・会計をする
↓
④ 電子処方箋に対応した薬局へ行く
↓
⑤ 薬局で受付をする
↓
⑥ 薬を受け取る
電子処方箋にも紙の処方箋と同じく使用期間があり、原則として交付日を含めて4日以内に薬局で受付する必要があります。
▶関連記事:処方箋の有効期限はいつまで?期限切れになった場合の対応を医療事務が解説
電子処方箋という名前だけを見ると難しそうですが、患者さんが実際に行うこと自体はそれほど多くありません。
まとめ|電子処方箋は「紙をスマホに入れるもの」ではない
電子処方箋は、これまで紙で発行していた処方箋を電子化し、電子処方箋管理サービスを通して医療機関と薬局でやり取りする仕組みです。
電子処方箋を利用すると、患者さん自身が紙の処方箋の原本を薬局まで持っていく必要がなくなります。
また、マイナ保険証を利用してお薬情報の提供に同意することで、過去のお薬情報を医師・歯科医師・薬剤師と共有することもできます。
一方で、
「電子処方箋なのに紙を渡された」
「マイナンバーカードがないと使えない?」
「どこの病院・薬局でも使える?」
など、初めて利用すると迷いやすい部分もあります。
私が勤務している医療機関でもまだ電子処方箋は導入されておらず、現時点ではすべての医療機関で当たり前に利用できる仕組みというわけではありません。
まずは、
電子処方箋そのものは電子処方箋管理サービス上にあること
そして、
電子処方箋に対応した医療機関・薬局を利用すること
を覚えておけば十分です。
カードリーダーに突然「電子処方箋」という選択肢が出てきても、仕組みをすべて理解してから選ぶ必要はありません。
この記事が、電子処方箋を利用するか迷ったときの参考になればうれしいです。


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