医療事務の仕事はAIでどう変わる?受付・会計・レセプトなど業務ごとに考えてみた

医療事務

「AIが普及すると、医療事務の仕事もなくなるのでは?」

生成AIが身近になったことで、そんな話を目にする機会も増えました。

医療事務の仕事というと、受付や会計、レセプト業務を思い浮かべる方が多いかもしれません。

ですが、実際に働いてみると、患者さんへの案内や電話対応、院内での確認、書類作成など、仕事の内容はかなり幅広くあります。

私自身、医療事務として働く中で、受付・会計・レセプトだけでなく、院内掲示物やマニュアルの作成、新人教育などにも関わってきました。

その経験から考えると、医療事務の仕事すべてをまとめて「AIに置き換わる」「置き換わらない」と考えるのは少し違うように感じています。

AIと相性のよさそうな業務もあれば、人が対応する意味が大きいと感じる業務もあります。

この記事では、医療事務の仕事をいくつかの業務に分けながら、AIによってどのように変わる可能性があるのかを、実際に働いてきた立場から考えてみます。

医療事務の仕事はAIでなくなる?

結論からいうと、私は医療事務の仕事がすべてAIに置き換わるとは考えていません。

一方で、これまで人が行っていた仕事の一部をAIが補助したり、作業そのものが簡略化されたりする場面は、今後増えていくのではないかと思っています。

その理由のひとつが、生成AIには事実とは異なる内容を、もっともらしく出力してしまう「ハルシネーション」があることです。

医療事務では、患者さんの情報や診療内容、医療費など正確さが求められる情報を扱います。そのため、AIを活用できる場面が増えたとしても、出力された内容をそのまま使用するのではなく、最終的には人が確認する必要があると私は考えています。

医療事務には、入力や確認など比較的ルールに沿って進める業務がある一方で、患者さんの話を聞いたり、その場の状況に合わせて対応したりする仕事もあります。

そのため、「医療事務」という職種全体で考えるよりも、どの業務ならAIを活用しやすいのか、どの業務は人が対応する意味が大きいのかを分けて考える方が現実的ではないでしょうか。

私自身も、これまで行ってきた業務を振り返ると、「ここはAIがあれば助かりそう」と思う部分と、「ここをすべてAIに任せるのは難しそう」と感じる部分があります。

ここからは、受付・会計・レセプトなど、実際の医療事務の仕事ごとに考えてみます。

医療事務の仕事を業務ごとに考えてみる

医療事務とひとことでいっても、実際の仕事内容はさまざまです。

ここからは、私がこれまで経験してきた業務をもとに、AIを活用しやすそうな部分と、人が対応する意味が大きいと感じる部分を分けて考えてみます。

受付業務

受付では、患者さんの来院理由を確認したり、保険証やマイナンバーカードを確認したり、診察までの流れを案内したりします。

「受付」と聞くと定型的な仕事に見えるかもしれませんが、実際にはその場で判断することも少なくありません。

たとえば、「今日はいつもの診察ではなく別の症状について相談したい」「予約はないけれど急に具合が悪くなった」など、患者さんによって状況は異なります。

こうした場面では、患者さんの話を聞きながら必要な情報を整理し、場合によっては看護師や医師へ確認する必要があります。

一方で、

  • 院内の場所や受付時間の案内
  • よくある質問への回答
  • 患者さん向け案内文の作成
  • スタッフ向けの対応例の整理

など、内容がある程度決まっているものについては、AIを補助的に活用できる場面もありそうです。

ただし、患者さんが最初から要点を整理して話してくれるとは限りません。

言葉の選び方や表情、話の流れから「本当に困っていることは何か」を考えながら対応する場面も多いため、受付業務そのものをAIだけに置き換えるのは難しいのではないかと私は感じています。

むしろ、定型的な案内や文章作成をAIが補助し、その分、人は患者さんへの対応に時間を使えるようになる形の方が現実的なのではないでしょうか。

会計業務

会計業務では、診療内容をもとに医療費を計算し、患者さんに金額を案内します。

現在でも、医療費の計算そのものは医事会計システムを使って行うため、「すべてを人が手計算している」という仕事ではありません。

そのため今後AIが入るとすれば、計算そのものよりも、確認作業や患者さんへの説明を補助する場面の方がイメージしやすいです。

たとえば、

  • 前回と今回で金額が違う理由を整理して説明文を作成する
  • よくある会計時の質問に対する回答集を作る
  • 制度や算定内容をスタッフ向けに分かりやすくまとめる
  • 確認が必要そうな箇所を洗い出す

といった使い方は考えられそうです。

一方で、実際の会計では「前回より高いのはなぜ?」「今日はいつもと同じ診察だったのに金額が違う」と質問されることもあります。

こうしたときは、単に金額だけを見るのではなく、診療内容や算定された項目を確認しながら、その患者さんに合わせて説明する必要があります。

また、システム上は計算できていても、入力内容や算定そのものに誤りがないとは限りません。

生成AIにもハルシネーションがある以上、AIが示した内容をそのまま患者さんへ伝えるのではなく、最終的には人が根拠を確認する必要があると思っています。

会計業務については、AIがすべてを代わりに行うというより、確認や説明の負担を減らすための補助役としての使用が向いていると思います。

レセプト業務

レセプト業務では、診療報酬の算定内容を確認し、請求に誤りがないかを点検します。

この業務は、受付や患者対応と比べると、AIやシステムによる支援と相性がよい部分が多いように感じます。

たとえば、

  • 算定漏れや入力ミスの候補を拾う
  • 同じような誤りが繰り返されていないか確認する
  • 点検時に確認すべき項目を整理する
  • 複雑なルールをスタッフ向けにまとめる

といった場面では、AIが補助に入ることで確認作業の負担を減らせる可能性があります。

一方で、レセプトは単純に「ルールに合っているか」だけを見る仕事ではありません。

同じ診療行為でも、患者さんの状態や診療内容によって算定の考え方が変わることがありますし、カルテや医師の記載を確認しながら判断する場面もあります。

また、実務では同じような算定内容でも、地域や審査する側によって判断に違いがあると感じることがあります。全国共通のルールだけでは判断しきれない部分まで含めて、AIがそれぞれの医療機関に合わせた対応をするのは簡単ではないと思います。

診療報酬は改定があるため、古い情報や誤った内容をAIが出力してしまう可能性も無視できません。

そのため、AIが「ここは確認した方がよさそう」と候補を出してくれるのは便利でも、最終的に算定の根拠や実際の審査状況を確認し、請求してよいか判断するのは人の役割として残るのではないかと思っています。

レセプト業務は、AIによってなくなるというより、これまで人が一つずつ探していた確認ポイントをAIが補助し、より効率よく点検できるようになる仕事のひとつかもしれません。

電話・患者対応

電話対応や患者さんへの説明は、医療事務の中でも特に相手に合わせた対応が求められる仕事だと感じています。

たとえば同じ「予約を変更したい」という問い合わせでも、

  • ただ日時を変更したい
  • 体調が悪く、今日受診できるか相談したい
  • 薬がなくなりそうだが予約日に行けなくて困っている
  • 家族が代理で連絡している

など、背景はそれぞれ違います。

話の最初だけでは要件が分からず、やり取りをしながら「何に困っているのか」を整理していくことも少なくありません。

AIであれば、よくある問い合わせへの回答案を作ったり、電話対応のマニュアルを整理したりする用途には活用できそうです。

一方で、患者さんの話し方や声の様子から状況をくみ取ったり、「これは受付だけで判断せず看護師に確認した方がよさそう」と判断したりする部分まで、すべてをAIに任せるのは難しいのではないかと思います。

また、医療機関には「いつもの対応では済まない問い合わせ」もあります。

決められた回答を返すだけではなく、その場で状況を整理し、必要な部署や医療スタッフにつなぐことも医療事務の役割のひとつです。

そのため電話・患者対応では、AIが直接患者さんに対応するというよりも、スタッフがよりスムーズに対応するための補助として活用する方が現実的です。

マニュアル・院内掲示物などの作成

医療事務の仕事の中でも、文章を作ったり情報を整理したりする業務は、生成AIを活用しやすい分野だと感じています。

私自身、これまで院内掲示物や業務マニュアル、新人向けの資料などを作成することがありました。

こうした仕事では、

  • 文章のたたき台を作る
  • 長い説明を分かりやすく整理する
  • 患者さん向けにやさしい表現へ言い換える
  • マニュアルの項目や構成を考える
  • 誤字脱字や分かりにくい表現をチェックする

といった部分で、生成AIを活用できそうです。

特に、ゼロから文章を考えるよりも、AIにたたき台を作ってもらい、それを実際の院内ルールに合わせて修正することで、作成にかかる時間を減らせる可能性があります。

また、院内掲示物に使うイラストなども、0から作るより画像生成AIを使うことで短時間で用意しやすくなります。文章だけでは伝わりにくい内容を視覚的に補うことで、掲示物を見た人にも分かりやすいものにできると思います。

AIが作った文章がその医療機関の運用と合っているとは限りません。

たとえば受付方法や予約の取り方、院内での対応手順などは医療機関によって異なります。そのため、生成された内容をそのまま掲示したりマニュアルとして使用したりするのではなく、実際の運用と照らし合わせて人が確認・修正することが前提になると思います。

それでも、今回挙げた業務の中では、マニュアルや院内掲示物の作成は比較的AIを取り入れやすく、「仕事を任せる」というより、作成を効率化するための道具として使いやすい分野ではないでしょうか。

AIが入っても人が必要だと感じる仕事

こここまで業務ごとに見てきましたが、医療事務の中には、AIが普及しても人が対応する意味が大きい仕事がたくさんあると思っています。

特に、患者さんや院内スタッフとのやり取りが必要な場面です。

たとえば、

  • 患者さんの話から、本当に困っていることを整理する
  • 不安そうな方や怒っている方に合わせて対応する
  • イレギュラーなケースで、その場に合った判断をする
  • 医師や看護師、他部署へ確認・調整する

といった仕事です。

受付にいると、患者さんから最初に聞いた内容だけでは、何を求めているのか分からないこともあります。

話を聞いていくうちに、「会計について聞きたいのではなく、実は次回の受診について不安だった」「薬のことを聞きたいように見えて、実際には受診が必要か相談したかった」と分かることもあります。

こうした場面では、決められた質問に答えるだけではなく、相手の言葉や状況から必要な対応を考えなければなりません。

また、自分だけでは判断できない場合に「これは看護師に確認しよう」「医師に確認してから回答しよう」と判断することも重要です。

AIによって情報を整理したり、対応方法の候補を出したりすることはできても、その場の状況を見ながら最終的に誰へつなぎ、どう対応するかを決める役割は、今後も人に残るのではないかと思っています。

AIによって定型的な作業が減れば、その分こうした患者さんとのやり取りや院内の調整に時間を使えるようになる可能性もあります。

そう考えると、AIは医療事務の仕事をすべて奪うものというより、人にしかできない仕事へ時間を使いやすくするための道具になるのかもしれません。

医療事務でAIを使うときに注意したいこと

医療事務で生成AIを活用する場合、便利さだけでなく情報の取り扱いには特に注意が必要です。

医療機関では、患者さんの氏名や生年月日だけでなく、受診歴や診療内容など多くの個人情報を扱います。厚生労働省も、医療機関等に対して「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を示しており、2026年6月には第7.0版が公表されています。

そのため、たとえば実際の患者さんの情報を含んだ文章を、そのまま外部の生成AIサービスへ入力して作業するといった使い方は避ける必要があります。

私が仕事でAIを使うとすれば、

  • 個人を特定できる情報を入力しない
  • 実際の患者情報ではなく、架空の例を使って文章のたたき台を作る
  • 勤務先で決められたルールを確認する
  • AIが出した内容は必ず人が確認する

といった点は最低限意識したいと思います。

また、情報漏えいだけでなく、これまで触れたハルシネーションにも注意が必要です。

文章が自然だからといって、内容まで正しいとは限りません。特に診療報酬や医療制度については、古い情報をもとに回答したり、存在しないルールをもっともらしく説明したりする可能性があります。

AIを使って作業時間を短縮できたとしても、その内容を確認する責任までAIに任せることはできません。

医療事務で生成AIを活用するのであれば、「何でも入力して答えを出してもらう」のではなく、情報管理と最終確認を前提に、使える部分だけを補助してもらうという距離感が大切ではないかと思います。

まとめ|AIに仕事を奪われるより「どう使うか」が変わりそう

AIが普及しても、医療事務の仕事がすべてなくなるとは私は考えていません。

一方で、文章作成や情報整理、確認作業など、AIを活用することで効率化できる業務は今後さらに増えていくのではないかと思います。

受付・会計・レセプト・電話対応など、医療事務の仕事をひとつずつ見ていくと、AIと相性のよい部分と、人が対応する意味が大きい部分の両方があります。

特に、患者さんの話を聞いて状況を整理したり、イレギュラーなケースに対応したり、医師や看護師と調整したりする仕事は、人だからこそできる部分がまだ多く残ると感じています。

また、生成AIにはハルシネーションの問題があるため、医療現場で使う場合は、出力された内容をそのまま信用するのではなく、最終的に人が確認することが欠かせません。

個人情報の取り扱いや勤務先のルールにも十分注意する必要があります。

AIを「仕事を奪うもの」として考えるよりも、定型的な作業を補助してもらい、その分、人にしかできない対応へ時間を使えるようにする道具として考える方が、今の医療事務には合っていると思います。

今後AIの精度や医療機関での活用方法が変われば、医療事務の仕事の形も変わっていくかもしれません。

その変化を見ながら、AIに任せられる部分と、人が担うべき部分を見極めていくことが大切になりそうです。

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